でも抜けててカッコ悪い

患者さんも私も歯を抜きたくないという点では全く変わりません。でも、残念ながら前に書いたように、心ならずも失われてしまう歯もあります。お笑いの世界でギャグに使われるように、前歯が一本なくなるだけで、その人の威厳は大きく傷ついてしまいます。どんなにハンサムでも、絶世の美女でもだいなしです。こういう患者さんに対して私が心がけていることは

必ずその日のうちに見た目を元通りにする

ことです。「歯抜けでカッコ悪い」という理由で来院された患者さんをそのままで帰すことは、私の医療人としてのプライドが許しませんので、どんなに時間がかかろうが、少なくとも歯抜けであることが一目でわかるようにはしません。


審美歯科は高いのか

例えば、このケースのように一本抜けて「かっこ悪いので直してくれ」というのは美容であって医療ではありません。医療でないものには健康保険は利きません。これは出産なども同じ考え方です。実際、仮の歯を作ることに対して健康保険にはなんの点数もないのです。したがって多くの医療機関ではこの仮の歯を作ることを自費の扱いにしています。

ただし、多くの場合、何らかの疾患があるのも事実です。例えば虫歯が原因で前歯がなくなってしまった場合は、これは美容なのでしょうか、医療なのでしょうか。それは少なくとも虫歯の治療の部分については医療なのです。しかし、虫歯の基礎治療が終わって「前歯をきれいに入れたい」と患者さんが希望したときからこれは美容になるのです。

しかし、いまどき「前歯は金銀ピカピカでもいい」などと思っている患者さんは皆無です。また、冒頭にも言ったように、最初から審美的要素は当然必要です。それを「これは審美歯科なので保険は一切利きません」というわけには行かないのです。ですから、私は保険であろうとなかろうと、まず見た目を元通りにすることにしています。

なぜ前歯はあんなに高いのか

審美歯科の代表的な材料はセラミックです。これもやりかたはいろいろあるのですが、治療(咀嚼の回復)と美容(美しい歯並び)を兼ね備えたものとして使われるのが焼き付けポーセレン冠です。ここで使われるセラミック材料は磁器に近いもので、これを金属の表面に焼き付けて作るもので、金属とセラミックのハイブリッドという意味ではホーローの鍋などに近い概念のものです。

前歯を審美的に治療するには最低でも真ん中の4本、場合によっては左右4本の合計8本くらいになることは珍しくありません。自費の価格というのは医院によって違いますので一概には言えませんが、一本あたり十万円前後が多いようです。これは非常に手間も原価もかかる方法なので、この価格については私はどうしようもないと思います。私はこれについては現在一本8万円+消費税をいただいています。また、最近は金属を使わずにCAD/CAMでジルコニアのフレームを作る、メタルフリーのセラミック冠も多くなりました。こちらは9万円+消費税をいただいています。


保険で前歯はきれいにできないのか

結論を先に言うとできます。2007年現在、三割負担として、詰めものなら数千円、かぶせ物なら1万円程度出費すれば(回数により変化しますが)、プラスチック材料で前歯の治療をすることができます。私は、正直に言って、プラスチックの材料はできるだけ使いたくないのです。しかし、神経まで達していないような虫歯にセラミックをかぶせるというのはあきらかにやりすぎですので、小さい虫歯に対してはプラスチック材料を詰めるのが原則です。これでも充分見た目はきれいになります。


ただし、一見歯抜けになっているほどの大きな虫歯に対してはプラスチック材料はあまりお勧めしたくないのです。一番大きな理由は不潔になることと材料的欠点です。結論としては「ちゃんとするのなら前歯には金をかけたほうが無難です」ということになります。

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