691 やはりFCZはすごい
JH1FCZ大久保忠OMというのは、私のような半端なジャンクいじりから見ると
神様のような存在です。30年ほど昔にFCZ研究所のキットで、あの手書きの
説明書で実にいろいろなことを教えていただきました。
現在はこれらの活動から引退されてJR3GOXの児玉OMがキャリブレーションと
して引き継がれているようですが、FCZが残した実証的な自作精神には
30年経った今でも、私は近づくことすらできていません。
ところで、現在遊んでいる低周波増幅回路ですが、これの設計方法は
前に書いたようにある程度確立しています。しかし、この通りに
作ってみてもどうもイマイチなのです。増幅度が半端だったり、音が
ひずんだり、条件を変えてみてもなかなかこれという感じになりません。
たぶん、トランジスタのhFEがばらついているとか、波形の上下が
クリップしているとか、直線的な増幅が得られてないとかなのでしょうが
ではどうすればいいか、となるとなかなか答えもみつかりません。
しかし、その昔、FCZの一石マイクアンプを作ってみたときには
実に美しい音が得られたではないですか。あれはすごく簡単だけど
まだ初心者だったので感激しただけなのでしょうか。
あれはもう回路図を見るまでもなくまるおぼえできる回路でした。
自己バイアスで、C-Bに100KΩ、VCC-Cに1KΩ、入力に1μF、
出力に10μFという実に覚えやすい数字でした。ついでにE-GNDに
100ΩのVRとすれば完璧でしたが、ここは200Ωでした
これを見るとこの数字、それほど精密な理論の元に決めたというよりは
代表的なトランジスタのC945とかC1815で、一番入手しやすい数値の
パーツで最大限の結果を得られるように決めたと思われます。
であれば、形こそチップに変わったとは言え低周波増幅用としている
C2712でもそれほど条件が変わっているとは思えません
実際、C1815との違いはhFEとコレクタ損失くらいのものですから
ほぼ互換性があるといってもよさそうです。
極端に言えば抵抗2個コンデンサ2個でできる回路ですから
これも簡単に基板じか付けで作ります。この写真では入出力とも
チップ積層セラミックコンデンサになっていますが、出力は電解で
10μFと33μFの2バージョンを作り、これを並列接続してみました。
この容量差で気持ち程度ですが低音のゲインが増した気がします。
TRと4個のチップと電解コンデンサ、100Ωチップ半固定VRです。
所要時間10分というところです。
さて、これをMP3プレーヤーのヘッドフォンアンプとして使ってみると・・・
抜群の音です。ノイズもなく、どの周波数域もすなおに増幅されています。
これを車載することに決めました。
結局、オルタネーターノイズは出力にアウトプットトランスのST-71による
ラインフィルタで止めるしかありませんでした。
ラインフィルターによるゲインのロスをこのアンプで補う形です。
音質がかなり劣化しましたが、私の能力の限界で許容範囲となりました。