916 JA44のチェーン交換と考察
今年の後半には新モデルが出ると言われているスーパーカブ110、JA44ですが
走行18000Kmを超して、この機種の問題点で常に言われるチェーンの片(偏)伸びが
そろそろ限界に近づいてきました。これはチェーンにかかる力が一定でないか、
各駒の強度が全部均一でないので、つないだ駒の合計長さが部分で違ってくるものです。
この駒は全部で100個ありますから、ギヤ歯数の半分、24を引いた76駒分が上と下で
各38駒分の長さでギヤ間を渡っているのですが、この38駒分の長さが場所によって長い時と
短い時で大きく違ってくるのをこう言うのです。
そうすると、多少は遊びがあるほうが望ましいのですが、遊びが大きすぎると
減速時に緩んだチェーンが周辺に当たってジャッジャッと音を立てるようになります。
あまり極端に緩むと自転車のようにチェーンが外れることも考えられますが、実際には
前ギヤのチェーン周辺をガイドプレートというもので囲ってあるので外れません。
自転車も同様ですが、例えば外装変速機があるタイプでは、あの複数のローラーで
この問題を吸収していますが、駆動ギヤが大きく、ホイールの小さいギヤ径を変えて
変速する自転車と違って、オートバイでは駆動ギヤが小さく、ホイールのギヤが大きいので、
ああいう仕掛では無理なのと、それ自体が非力なエンジンの妨げになるのでしょう。
そういうわけで、後輪の軸の位置で適度な張りを調節するという最も原始的な方法です。
これはすでに片伸びしたチェーンを強化型のチェーンに交換して上側のチェーンカバーを
かぶせる前の状態ですが、前ギヤ(スプロケット)を15Tに交換した場合、100駒のチェーンは
後ろホイールを最大限に前に入れないと入りません。チェーンが入ってからこの目盛を
見ながら遊びが1~2cm程度になるように調整すると目盛はこのあたりになりました。
スーパーカブの整備書や解説動画では左右のチェンアジャスタをこの目盛で同じ位置に
来るように注意することと必ず言っています。ところが、これが思うほど簡単でないのです。
基本的には左側のアジャスタで張りの調整をしますから、この場合ですと1本目と2本目の
間で、仮にこの5本を0~4と数字を打つと、左側のアジャスタ前縁は0.5のあたりと
いうことになります。
では右側も0.5あたりにしてアクスルナットを締めようとするのですが、どうも右側は
チェーンに引っ張られている感じがしないばかりか、若干アジャストナットが浮いている
様子で、こんなんで本当に調整できているかはなはだ心許ない感じです。それで素手で
そこそこ抵抗が出るあたりまで回すとアジャスタ前縁は1.5あたりまで行ってしまいます。
これはなぜか考えると、このチェーンと前後スプロケットの関係を模式図にすると
こういう感じになります。これを真上から見たのが下側の図です。
A,Bがおおむねアクスルナット/チェンアジャスタの位置とします。
これを真上から見た場合の図を地面に突き立てたスコップと見立てると、Aまで硬い土に
突き刺してある場合ても、Bの位置を手で容易に動かせるのが梃の原理の基本です。
逆に、後ろスプロケットの外周が少しでもチェーンの動作線から外側になると
その力でB点には前に引っ張られるのでなく、むしろ後ろ向きの力がかかることすら
容易に想像できます。昔のレコード盤を考えるとわかるように、円盤が回転していると
外周ほど大きくゆがみが生じて理想の回転面からぶれます。前後のギヤとチェーンとが
すべて理想的に同じ平面で回転しているとき、後ろのギヤ外周が左右にぶれると、
その都度、この図で言うB点にかかる力の向きは不定になるのです。
それで、右側のチェンアジャスタに後ろ向きの力を防止するナットを入れてみました。
現在は0.7くらいの位置で固定して、この位置で左のアジャスタをそれに近い値になる
ように調整するので若干面倒になりましたが、全く抵抗がない感じの右側を
適当に止めて、調整ナットが浮いている状態でアクスルナットを締めこむより、
二重ナットをちゃんと締められるので位置決めと脱落防止が容易になると思います。
しかもこのナットは緩んでも脱落しませんから、アクスルナットを締めた後なら
これが動いたとしても全くかまわないのです。