雑踏の誘惑

濃縮香港篇


2001,2〜4,Mar.

北村 家康


2日

ホテルの部屋がちょうど空中通路の真下に当たっていることもあって、朝の7時くらいになっても全く明るくなりません。今回はホテルの部屋にいる時間などありませんから全く問題ありません。さて、今回も食事は全食「そこらへん」でという原則は変わりませんが、本当にそこらへんのニューワールド地下アーケードにある「翠景粥麺」には前回ボラれた(ま、定価なのですが)ので「二度と来るかバカヤロー!」と誓ったという悲しい過去があります。

画像旺角の倫敦大酒楼。入口の右側に売店が見える

そこで、今回は一層マニアックに旺角の「倫敦大酒楼」という店で完全地元モードの飲茶をすることにしていました。この店はおなじみNIFTYの東アジアフォーラムで推奨されている店です。飲茶というと「午後のお茶」というイメージで、それも間違いではありませんが、自宅に台所が無い人が多い香港では、お粥や豆乳などの朝食を食べながらゆっくり新聞に眼を通す時間も本来の飲茶の一つです。後で気づいたのですが、このように地元の人に人気のある店の入り口には必ず新聞屋が店を出していて赤新聞青新聞(というかどうか知りませんが)をセットにして売っています。

画像赤新聞を読みながらの飲茶は香港人の教養というものです

画像MTR旺角駅

MTR旺角の駅に着くと、日本から蕁麻疹を出していた相棒が急に便意を訴えます。どうやら一刻の猶予もならない気配です。こういうときこそ中国世界の雑踏をテーマにしている先輩の腕のみせどころです。「こういうときはマクドナルド」と躊躇せずネイザンロード沿いのMACに急行して事なきを得ました。これで原因物質が排出されたせいかぶつぶつも引き、以後絶好調になったようでした。日本だと「悪いから」とコーヒーの一杯も注文するところですが、何も買わずトイレポイントとしてだけ使い、店内のソファーに座って待つことなどなんの問題もありません。お勧めします。

画像トイレスポットはMAC、これアジアの常識

このMACからネイザンロードを挟んでもう一軒MACがあります。東京で言うと銀座三越と服部時計店の距離ですが、ネイザンロードが横断できないようになっているので必要なのでしょうか。とはいえちょっと南に歩くと大きな交差点(山東街との交差点)で横断できます。そしてこの場所に評判の「倫敦大酒楼」があります。入り口にはお約束の新聞雑誌の売店がありますし、次から次へ地元のおっちゃんおばちゃんが直通エレベーターに吸い込まれていきます。

香港は竹の足場でビル改修シーズン真っ盛り画像

我々もこれに紛れ込んで3階にあがると、かなり広いフロア(たぶん80坪くらいか)に4人がけの円卓がぎっしりで、なかなか座るところがありません。その間を蒸籠満載のワゴンやらお粥のワゴンやら3種類の制服の従業員が行き来して独特の活気があります。朝の飲茶はどこの店でも料金均一システムでやっています。この店の場合、まず席についたら「やむまっえーちゃ?」と聞かれますので「ぽーれい」と答えます。このお茶が12HK$で、以後一品加えるたびに8HK$というあんばいです。今回はピータン鶏粥×2、大根餅の3品ですから12+24で36HK$(540円)ということになります。

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左に蒸篭、右にデザートのワゴン            お粥のワゴンとテーブルセット

お互いにすっかり満足してその辺を軽く散歩しました。セブンイレブンでホテルになかった歯ブラシとひげ剃りを60HK$で仕入れた後、西洋菜南街(女人街の一本西)の市場(街市といいます)を歩きました。

西洋菜南街の街市画像

中心に仕入れや買い出しのトラックがぎりぎり通るスペースが残してあり、それを挟んで両側に主に野菜関係の屋台テントが並んでいます。その裏に細い通路があって建物の1階部分に肉や魚の生もの関係が並んでいます。

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道路の中心よりは野菜関係の屋台       両脇の建物の1階は肉や魚の店

ここの市場は比較的小さい規模で100mくらいの長さでしょうか。なかには食料品店もあって、調味料、醤、乾物などが棚一杯に並んでいます。あー、こういう店がうちの近所にあればいいのになあ・・・。

画像あー、こういう店が近所にあればなあ・・・

今回は到着が深夜ということもあって、不本意ながら日本から600HK$(1万円)を用意していきました。ところで、外貨を用意するのなら三菱銀行人形町支店をお勧めします。ここには常時8種類くらいの外貨がそろっています。レートも現地ホテルで手数料を払って少額交換すると結局はこの程度になりますからそれほど損とも言えません。ま、しかし香港で両替ということになると尖沙咀のチョンキンマンション(重慶大厦)でしょう。

やっぱり両替はチョンキンマンション。レートが表示してある画像

というわけで、MTRで尖沙咀に戻ります。重慶大厦の入り口にはゲストハウス(安宿)の客引きのアラブ人がたむろしているのでちょっと怖いのですが、比較的いいレートで手数料なしの両替屋が並んでいます。日本円は0.068ということですから1HK$が14.7円くらいでかなり安いと思います。とりあえず2万円替えて一旦ホテルに帰ります。

MTRほど便利なものはない画像

私の今回の予定としては、一日でできるだけ多く回りたいので、MTRのみを利用して、時間のかかりそうなところはすべてパスすることにしていました。朝食の後、黄大仙(ウオンタイシン)から北角に回ってチョンヨン街の市場を通るトラムを見た後、銅鑼湾(コーズウエイベイ)のヌーンデイガン(午砲)を聞いて湾仔(ワンチャイ)というつもりでしたが、すでにこの段階で11時を回りましたので黄大仙と北角はカットしました。せめてヌーンデイガンに間に合うようにホテルを出ようとすると、相棒がいじっていたセフティボックスがエラーを起こしています。このセフティボックスは自分が持っているクレジットカードをキーの代わりに記憶させるシステムですが、スリットの中を最後まで移動させず途中で抜いたためにメモリーが書き換えられて閉まったままで本来のカードを受け付けなくなったのです。

これが問題のセフティボックス画像

こうなってはしかたありません。急いでフロントに電話をかけて
「Is there Japanese staff?」
と聞きました。こういうときには毎度ながら日本人に勝るものはありません。ところが、このニューワールドはどの本にも「日本人がいる」とか「日本語が通じる」とか書いていますが、前回泊まった時にも全く日本語は無理でした。

画像ペニンシュラはそのへんどうなってるんでしょうかね

しかたなく「The safty box is out of order , so I can't use my creditcard」と言うと、とりあえず人をやるから、とルームメイドのおばちゃんがやってきて試した後「I call the engineer」と専門家を呼びました。しばらくしてやってきた金庫破りのようなスタッフは鮮やかでした。メモリー部になにかあてがってピピピと数秒トライしたあとカチッといって扉が開いた時は二人して思わず拍手してしまいました。しかもチップを受け取らず風のように去っていきました。しかし、考えてみれば、あの機械があればセフティボックスは全部破れるということではないですか。ウーム。

画像シェラトンはテンキー方式だったような気がする

思ったよりずいぶん早くトラブルは解決したのですが、その時間からでは正午に銅鑼湾はかなり厳しくなりました。そこでヌーンデイガンもあきらめて、スターフェリーとトラムで銅鑼湾に行くことにしました。

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スターフェリー乗り場         オーシャンターミナル、ブランドショップが並ぶ

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中環のコンノートロード               中国銀行をバックに

スターフェリーは一階デッキで2.2HK$、2階建てトラムは2HK$です。これでのんびり銅鑼湾に着いた後、そごうのはす向かいにある地元系の華潤百貨で相棒のおみやげ探しにつきあいました。また、彼がすっかり気に入ったポーレイ茶のいいところを100g計り売り(38HK$:たいして高級品でないが)してもらいました。

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トラムから湾仔あたりを見る           そごうの向かいにある地元系の華潤百貨

さて、時刻は午後1時半、どこで昼食をと考えますがゆっくりしているとほとんどの店は2時で飲茶が終わってしまいます。そこで、昼休みの無い尖沙咀の「翠園酒楼」に行きました。ここはさすがに人気店で15組くらいの順番待ちです。あれこれ言ってやっと通してもらった3階席はワゴンセールがなく紙で注文するスタイルで、それに気づくまで時間がかかってしまいました。ポーレイ茶、春巻、エビ餃子、牛筋のクレープ、蒸し餃子で138.6HK$(約2000円)は、やはり高級店の値段ですね。

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尖沙咀の「翠園酒楼」               翠園店内、ポーレイにはすっかりはまりました

今回はマニアなポイントは湾仔(ワンチャイ)を中心に攻めるつもりで来ました。というのは知り合いから湾仔にある「VCD&DVD新画駅」という店で和製AVをコピーしたVCDを買ってきてくれと頼まれていたのと、電脳中心のうち湾仔の「188東方商場」をまだ調査していなかったからです。まずジョンストンロードとヘネシーロードが合流する場所にある「VCD&DVD新画駅」という店に行きました。ここは古今東西の映画VCDがずらっと揃っています。ほとんどは15HK$均一で、目的の和製AVもかなり豊富に並んでいます。しかし、結局目的の物が見つからないので私は何も買わず、相棒はジャッキー・チェンの映画とか日本のアーティストのVCDなどを買っていました。

188東方商場画像

この角からそのまま南下して湾仔道と交差するところにあるのが「188東方商場」で、ここは九龍側にある「信和中心」を小型にしたようなオタクビルです。おなじみの日本製のアイドルやアニメ関係の店や、ゲームソフト、コピーソフト、AVなどの店が狭いところにぎっしり並んでいます。私の探しているAVは結局ありませんでしたが、相棒はおみやげにあれやこれやのモノを買っていました。毎度言うまでもなく不法にコピーされたものを日本に持ち込むことは違法であることはよく説明しておきました・・・・・・。

画像銅鑼湾あたり

とまあ、ちょっと変な間があって、この「188東方商場」で思わぬ長い時間を過ごしてしまい、パンパンに疲れた足をひきずりながらMTRを使ってホテルに帰り着いたらすでに7時頃になっていました。とりあえず、これからが本番なので風呂に入り、よく足のストレッチを行って、やっと人心地を取り戻しました。

全くMTRほど便利なものはない画像

さて、時刻は7時半、これからが本番です。まず重慶大厦で1万2千円を両替して旺角に向かいます。

画像アラブ人の両替屋

相棒がお土産ないしは自分用にR*の時計を買いたいとかいう話なので、体験的にこの手の店が多い女人街に向かいます。

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女人街、携帯ケース屋               女人街、ヘッドセットで洋服の叩き売り

さっそく一軒の屋台で聞くと280HK$とか言っています。相棒に聞くと2千円なら出せるというので、「100」と言うと、案の定お話にならないというそぶり、じゃあいいやと言っても乗ってくる様子もありません。すなわち100では相場より低いことはあきらかです。ぶらぶら歩いていると同種の店はけっこうあります。このてのコピー商品を売る店を鑑別するポイントは写真を飾っていることです。すなわち写真だけなら言い逃れできるからです。逆に言うと現品を置いている店ではほとんどコピー商品は扱いません。しかしよく見ると現品の中にさりげなくコピーを並べている店もあったりしていろいろですが。

この写真がポイント画像

次に交渉したのがこの手の現品を並べている店で、端のほうに目立たないようにR*の時計を置いています。聞くと今度は「230」と言っています。再度「100」と言ってみると「200」と今度は話に乗ってきます。かなり粘って最終的に140HK$(2100円)くらいでまとめました。その後聞いたところによると仕入れの相場は1900円だそうですからまずまずではないでしょうか。相棒はこれとは別に普段用にPoloとかの40HK$(600円)の時計も買っていました。その後女人街をぶらぶら歩いて携帯電話型ライター15HK$も買ってお土産はそろったようなので、旺角電脳中心を軽く流してみました。やはり人民共和国になってから微妙に自主規制している点がちらほら見えます。コピーソフトなどもあるにはあるのですが、なんでもそろうという感じではなくなっています。むしろ秋葉で中国人が売っているCDの方が激しいかもしれません。ま、値段が50倍くらいですが。

画像  画像
旺角電脳中心        コピーソフト屋、おとなしくなった

ハード関係はそれほど驚くような価格の物もなく、高いものは初期不良を考えると買えませんのであまりおもしろくありません。やはりハード関係の面白さでは生産国である台湾や中国には香港は勝てません。というわけで、電脳中心は早めに切り上げました。また、今回は深水[土歩](サムソイポ)の黄金電脳中心は時間もないことからカットしました。

画像旺角電脳中心2階

さて、女人街が終わったら次は男人街(廟街)です。腹もちょっとへってきたし、粥麺店がちらほらあって廟街の北端ということで油麻地に行き、MTRの駅を出たところにあった「巨発茶餐廰」という小さな店で、麺の夕食にします。鶏そばと五目肉そば26HK$×2です。なんで香港はどこで食べてもこんなにうまいんでしょうかね。

油麻地「巨発茶餐廰」画像

いやー満足満足と言いながら、早速廟街を攻めます。廟街はネイザンロードに平行にほぼ油麻地−佐敦と同じ長さになっています。ちょうど中間のあたりに天后古廟という通りの名前の元になった廟があります。ここを境に北側は違法な物を売っている店が多く出ているのが特徴です。今回はその北端から攻めるわけですから、いきなり違法地帯のまっただなかということになります。同じ違法物といってもこちらは女人街のように偽ブランド品がメインではありません。男人街という別名のとおり、男物の違法物ということでエロ関係が多いのが特徴です。

画像廟街、写真を撮るのはかなりヤバイ

今回特に目についたのが裏VCD屋で、ちょうど将棋版程度の大きさの箱に裏VCDをぎっしり入れて周辺の客に一掴みづつ手渡して選ばせます。多くはアメリカのxxx物ビデオのVCD化品のようですが、中にはどうみても日本の表物のAVもたくさんあって、我々にはどうということもないのですが、それでもけっこう需要があるらしくかなりな本数がでていました。ところで表世界での最近のトレンドは韓国製のモザイクなしというやつらしく、どんな程度か見なかったのですが、湾仔の「188東方商場」ではどこの店でも大きく宣伝していました。

画像無関係な写真でご容赦

私も束を手渡されて、どんなもんかいな、と見ていると、売人がいきなり束をひったくって箱に戻したかと思うと、箱の下に垂らしてあった布で箱を包み込んで走り去り、そばにいたもう一人が箱を載せてあった台を持ってこれまた脱兎のごとくどこかに消えてしまいました。この間10秒くらいのものでしょうか。あっけにとられていると、北側から3人組の制服警官がゆっくり廟街の巡回にやってきました。話には聞いていましたが、あまりにも鮮やかな逃げっぷりに二人で「いやー、いいもん見たなあ・・・」と感心してしまいました。その後どうなるのか観察していたら、5分くらい経って全員戻ってきて全く同じように営業を始めていました。今度は注意して見たせいで見張り役や助手が誰なのかわかるようになりました。しかし、さすがに写真を撮ることだけは断念しました。彼らは黒社会(ヤクザ)のメンバーですから、下手をすると九龍湾に浮かぶような結果にならないとも限りませんからね。

画像再度無関係な写真でご容赦

今回は前述したように日本AVのVCDを頼まれていたのですが、結局どこの店でも見つけることができませんでした。で、ただなかったというのもなんですし、社会勉強の意味で(?)先ほどの逃げたのとは別のVCD屋で5枚ばかり「見せて」もらいました。一枚20HK$(300円)は日本のAVの相場の10分の1というところでしょうか。PCのコピーソフトを日本に持ち込むことは、コピー商品という点が違法ですが、裏VCDはたぶんコピーであることもさりながら、その存在が公序良俗に反するという意味で日本に持ち込むことはできません。買うこと自体は違法ではありません(現在の人民共和国では買うことも違法かもしれない)が、こういうものを買われた場合は私と同じように(?)現地で捨てて帰国してくださいね。

画像これは女人街の写真です

これでほとんどの懸案事項が終了しました。相棒が麻雀の下駄牌を買いたいというのですが、台北の士林夜市ではそこらじゅうで売っていましたし、値段もうろ覚えですが日本円で数百円だったような記憶があるのですが、廟街では売っている場所も2・3箇所で、値段も200HK$(3000円)前後ではちょっと買えません。結局下駄牌はあきらめて、私が翌日着るために偽ブランドのポロシャツを25$(375円)で2枚買いました。400HK$(6000円)の正札がついているのはご愛嬌というものでしょうか。これとは別に上に羽織るごく薄手のウインドブレーカーを68HK$というのを60HK$(900円)まあこれは根性を出せばもう少し安かったかもしれません。

画像歩く隙間もあまりない

さらに私としてはどこかで宜興紫砂の茶壷(中国茶の急須)を仕入れたいと思っていたのですが、これもなかなか気に入る値段のものがありませんでした。ぶらぶら歩いてほとんど佐敦の駅付近に達したあたりで足も疲労のピークに達しましたので、タクシーを拾ってホテルに帰りました。20HK$です。まあ一日だけのマニアックなツアーとしてはまずまずではないでしょうか。ちょっと列記してみると、

旺角で飲茶の朝食→市場見物→チョンキンマンションで両替→スターフェリーで中環→トラムで銅鑼湾→地元系デパートで買い物→尖沙咀翠園で飲茶→湾仔でVCD購入→「188東方商場」をじっくり攻める→女人街でコピー商品を攻める→旺角電脳中心を散策→油麻地の粥麺店で夕食→廟街で裏物を攻める

という流れになります。こうやって改めて見るとやはりかなり「濃い」ですな。最終夜(と言っても昨日来たばかりですが)ということもあって、おなじみペニンシュラ裏のセブンイレブンでビールを買って帰ります。もっとも、私はまだ体調不十分なのでアップルジュースにしましたが。

全くMTRにはお世話になりました画像


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