雑踏の誘惑

年末年始篇

2002〜2003

北村 家康


前書

私の出身地は広島県福山市という瀬戸内海沿岸の温暖な地方都市です。この地で18歳まで育ち、進学の為に上京して以来30年以上にわたって中華料理に耽溺しています。そういうわけで、我家の年末年始の食生活は広島風と中華風が微妙に混じったものになっています。12月30日には横浜中華街で中華材料を仕入れ、31日には広島風の材料を求めて都心をうろうろするのが習慣になっています。私の中にある「雑踏への誘惑」は元は上野アメ横、神保町の古書店街、秋葉原電気街、そしてこの横浜中華街から始まったのです。

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「福が来る」と同音の倒福


横浜へ

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さて、まずは首都高速で横浜公園まで行きます。狩場線の山下町出口でもいいのですが、東京方面から中華街へのアクセスという観点で見ると、行きは横浜公園で降りて帰りは山下町で乗るというのが、比較的スムーズなような気がします。

非常にわかりにくい一方通行の道にあるのですが、この山下町公共駐車場が個人的にはお勧めです。トイレが清潔なのと、中華スーパーマーケットに一番近いので荷物が多い時は便利という利点があります。ただし、中華街の名店で食事するのなら、割引があるのでホリディインの並びにある中華街パーキング(停車場)の方がいいかもしれません。

山下町公共駐車場の目印は、向かいの「天仁茗茶」です。台湾系の大手メーカーなので、それほどいいものもないかわりに、あたりはずれもありません。ギャンブルをしてみるのなら、隣の「三本商事」で3000円クラスの高山茶を買ってみるといいかもしれません。

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天仁茗茶と三本商事


まず一番最初に行くのは中華街大通り中ほどにある「金陵酒家」です。ここで焼叉を買うのですが、混雑時には焼き上がりを2時間ほど待つこともあります。私は金陵の味のほうが好きなのですが、もう少し先の聘珍楼の並びにある「有昌」の方が焼叉を求めての行列は激しいものがあります。

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金陵酒家と有昌


今年は運良く一発で叉焼が買えたので、次なる目標の皮蛋を求めて市場通り方向へ歩いていくと、同発の並びに「崎陽軒」の売店ができていました。横浜といえば崎陽軒のシュウマイと反射的に連想するかたもいるでしょうが、中華街ではそれほど目立つ存在ではありませんでした。

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崎陽軒売店と醤油容器のバリエーション


市場通りの角は中華材料では大手の「源豊行」です。時間になると、こういうあんばいにディスプレイが割れて中華ぼうやが出現します。ここで調味料や安渓の鉄観音を買うのですが、今年はお茶の値段がばかに高くなっていました。次に向かいの「栄興號」でピータンを買います。ここは2種類の皮蛋があって、価格も他より安いようです。

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源豊行の看板と栄興號


市場通りの角を曲がってすぐにあるのが「日日華」で、ここでは肉まんや叉焼饅を買います。並びのレコード店で中国のお年玉袋を売っています。また、今は「景徳鎮」の後ろに隠れてしまった「小島食器店」では日本製の中華料理用食器(これが意外に入手難)が手に入ります。市場通りを抜けて関帝廟通りに出ると「愛龍號」という店が道路に乾物を広げています。ここでは幅広の春雨を買います。これは鍋物、特にピエンロー(豚バラと白菜なべ)に重宝するのです。

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日日華と愛龍號


そのまま南門通りまで出て「悟空」で台湾茶の極上品をごく少量(30gと50g)買いました。非常に高価です。すこしバックして上海路に入ります。お粥の「謝甜記」はここに支店ができたのですが、こちらも行列しています。

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悟空と謝甜記分店


上海路ではいつも「伍福壽」でお茶を見るのですが、今年は休みでした。そこで、その並びに有る「頂好」(市場通りにもある)で各種の点心類を買い、大通りを通り抜けて「永楽製麺所」に行きます。ここで年越しそば用の中華麺類を大量に買い込みます。ここは友人を案内するときに格好の場所で、非常に種類が多くそろえてある麺とスープを選んでその場で送れば翌日には日本全国どこでも着くという、ラーメン好きの聖地のような店です。

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頂好と永楽製麺所

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永楽製麺所の壁一面に並ぶ中華スープ


これですっかり荷物が重くなったので、中山路から中華街大通りに入り、「大珍楼新館」でやや遅い昼食を飲茶で摂ります。ここの3階は私見では一番香港に近い雰囲気の飲茶ができる店だと思います。まあ値段もそれなりですが・・・今回は混んでいたので2階席でワゴンサービスがありませんでしたが、壁一面の香港夜景がじつにいい感じです。

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大珍楼新館と2階席、外壁に倒福が少し見える

これで横浜の買出しは終わり、翌日の広島的食材に備えます。


広島へ

本当は広島に行きたい所なのですが、そうもいきません。広島版食材で最も大切なのは広島牡蠣で、傷みやすいものだけに3が日賞味できるものはなかなか入手難です。むろん御徒町の「吉池」で殻付牡蠣を買うという選択もありますが、あまりに高価すぎます。
そこで、普通は日本橋高島屋地下で当日朝空輸された広島牡蠣を買いますが、今年は近場で済ませてしまいました。最も入手難なのは穴子です。東京湾で獲れるはずなのですが、この季節は魚売り場が他の正月用食材に占領されてしまって全く手に入りません。以前は西宮在住の姉に送ってもらったりしていたのですが、これについては毎年入手に頭を痛めています。今年は錦糸町丸井の地下で調達しました。

大晦日から頭と腸をとったイリコ(煮干)を翌日まで水につけてだし汁とし、少量の醤油と塩で味を調え、牡蠣を加えて雑煮とします。底に大根の薄切りを敷いて丸餅に焼穴子、西日本風の小ぶりのかまぼこ、京菜(小松菜で代用)と煮た牡蠣が具となります。

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広島風(我家だけ?)お雑煮


おせち料理ですが、これの広島版というのはあまりに食材が違いすぎるので、これは中華風と関東風(和風?)なものを2つ用意しますが、どうも子供達には和風版は人気がイマイチのようです。

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中華風と和風おせちの2ヴァージョン


前夜激しく夜更かしするせいで、昼近い時刻に起き、これらの脂っこい料理を胃に収めると、腹ごなしに初詣に出かけます。そして、なぜかミスタードーナッツの福袋を買って、これを昼食代わりにするのが習慣になってしまいました。

子供たちもほとんど大人になり、一緒に元旦のお雑煮を食べる機会も少なくなりました。このお雑煮の味を私が広島の生家から受け継いだように、子供たちにも伝わっていくのでしょうか。聞いたところでは「ピータンだけは絶対に必要」ということらしいですが・・・すべて中華風一色になるのかもしれませんね。

まあそれも面白いかもしれません。




本年もよろしくお願いいたします。

画像深川、富岡八幡宮にて


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