雑踏の誘惑

バブリー上海篇


20〜23,Nov.2010

北村 家康


2日目

さて、今日の予定は朱家角の半日観光です。上海という都市が揚子江の河口付近にできていることは皆さんご存知かと思いますが、実はこのあたりは揚子江の南側で江南地方と言って、非常に広い水郷地帯なのです。この地図で見ると、右の端あたりが上海で左上の1が無錫、2が蘇州で、このあたりが湖畔というのはわかるでしょうが、その間の部分にも小さい池や湖が無数にあるのがわかります。ここらあたりはこれらの池を結ぶ水路が縦横に走っていて、古い水郷の村が今でも残っています。この中でも特に水郷の風情を残しているものが、古い村という意味の「古鎮」として観光地になっています。3が上海から一番近い朱家角、4が周荘、5が西塘です。

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江南地方は水郷地帯

これらの古鎮は地図で見ると、一見たいして水路が無いように見えますが、少し拡大してみると網目状に水路が走っていて、航空写真で見ると水路の間に小集落と舟溜まりがそこらじゅうにあるのがわかります。これが、本日の目的地の朱家角です。

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朱家角付近            朱家角付近航空写真

上海付近の観光バスは多くが上海体育館駅にあるバスセンター上海旅遊集散中心から出ます。しかし、これは行きも帰りも大体決まっていて、9時頃スタート、帰りが4時というのが多いようです。このサイトで見ると朱家角一日遊覧が85元ということらしいです。

しかし、旅行記などを読むと、朱家角は狭い範囲なので、ざっと観るには2時間もあれば充分という意見が多いようでした。そこで、パッケージではなくて、行き帰りに高速バスを使って自由な時間で往復することにしました。この場合は市内に数箇所ある高速バス乗り場からバスが出ますので、静安寺から一番近い人民広場の南にある普安路バスセンターから出る「滬朱高速快線」に乗れば12元で50分で直通です。この「滬」は上海の古い名前です。「申」という古名もあります。東京のことを江戸とか武蔵の国というようなものです。だから言うまでもなく「滬朱」は上海−朱家角を意味しているのです。ということで、朝8時半にタクシーでこのバスセンターに行くと、どうも老人ばかりバス停に並んでいるのがいまいち気にいらないのですが、並んでいると30分くらいで2本目に乗り込むことができました。

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上海旅遊集散中心   朱家角のポスター 老人ばかりの普安路バスセンター滬朱高速快線

このバスは全員席が決まって動き始めてから料金を集めにくる方式で、むろん公共交通カードが使えます。おばさんの車掌が集めにくるわけですが、その時点では席は満員で補助シートまで出しているわけですから、自由に通路を歩けません。見ていると現金で払う人はほとんどなく8割は定期、2割が交通カードという感じです。で、これらを読ませる機械は出入口付近に置いてあるわけです。

そこでこのおばさん車掌は席の前の方から順番にこれらのカード類をどんどん集めていって、およそ30枚も集めると、それを持って一旦読み取り機の場所に戻り、一番下から順番に機械に読ませるのです。全部読ませ終わると、また席に戻ってきて、カードを預かった順番に返していくのです。で、この作業を数回繰り返してやっと最後尾の席までカードを読ませ終わると、すでに30分くらい経過しているのです。いやー中国ですねー!なんという非能率でしょう!後からしみじみ考えたのですが、あれを乗車時か降車時に機械に読ませると、人間が一人要らなくなるのです。そんなシステムにすると、このバス会社で何百人もの失職者が出るに違いないのです。そんなことを話していると、えらい勢いで高速道路をカッ飛ばす車外の風景は郊外の水郷らしい雰囲気に変わってきました。

青浦に停まった後、終点朱家角のバスターミナルに着きましたが、ここでトイレに行って帰ったら乗客全員きれいさっぱりいなくなっていて、どこらあたりから古鎮へ入るのか全くわからなくなりました。道路にもごく普通のバス停があるだけで、あたりを見回してもそれらしいものも、誘導するような表示もないので、しばらくうろうろしてしまいました。それでも観光客らしいのが出入りしている方向に行ってみると、チケット売り場のようなものがありました。また人力車のオッサンがしつこく勧誘するので方角はそちらでよさそうでした。

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どこから入るのか・・・            入り口付近のKFC

今考えてみても、あんなに狭い道でしかも橋だらけの古鎮の中で人力車に乗れるわけもありませんから、あれに乗っても入り口か、せいぜい放生橋のたもとあたりにしか行けないはずです。だとすると距離にしてせいぜい200mくらいですか、そこを人力車に乗せようというのはいい根性してますな。ちなみに、この入場券らしきものは、古鎮のなかにある施設と伝馬船の組み合わせになっているもので、古鎮の中を歩くこと自体には入場券はありません。それほどたいしたものがあるわけでもなさそうだし、同行者はごく短時間でも船酔いするので、入場券の類は買いませんでした。

まあこれは倉敷ですね。基本的にはどこを撮っても絵になるのです。ただ、これが日曜日ということもあって、ものすごい混雑なのです。しかもそこらじゅうで臭豆腐を売っていることもあって、独特のにおいとその周辺に蝿がワンワン飛んでいます。また小船の上では黄土色をした水を使って魚をさばいています。こういう古鎮で清潔を求めてはいけないし、むしろ不潔を楽しむ場合だとは思いますが、さすがに同行者が気持ち悪いと思っているのがありありと伝わってしまいました。

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基本的には美しい            その水で調理したヤツをテラスで食べる

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確かに絵にはなるが            いかんせん人が多すぎる

名物もいろいろあって、いつものパターンなら絶対角煮とちまきは食べているはずですが、先輩からちまきはあまりうまくない、とのアドバイスをもらったのと、行く直前にザリガニで奇病が出ているという記事があったので、ここの中で食べることはパスしました。すこし残念だったかもしれません。

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では、KFCなら安心だろうと思って入り口付近のKFCに行ったのですが、なにしろ人が多いので、とても満足に注文できそうもありません。しばらく見ていたのですが、これはもうどうにもなりませんので、ここで昼食を摂るのを断念して、さっさと上海に戻ることになりました。帰りも全員乗ってからオバサンがカードを集め始めるのは同じですが、微妙にスタイルが違っています。帰りも高速を飛ばしまくって40分くらいで普安路バスセンターに着きました。道路標識を見ると制限速度120Km/hです。たぶんそれ以上出しているでしょう。それほど品位の高い高速道路には見えませんでしたが120Km/hの制限はけっこう強気ですね。

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カードをまとめて集める            豫園の南翔饅頭店

さて昼食ですが、もう4時近くなってしまいましたので、それほどしっかりしたものは要りません。それなら、ということで、3日目に予定していた「南翔」の小籠包になりました。といっても豫園の本店は日曜日なら1時間半は並ぶということですから、貴重な時間をそんなものに使うわけにも行きませんので南京西路駅の最近オープンした世界最大のユニクロの裏にあたる呉江路にあるレストランビルに行きました。ここは豫園の本店の高価なメニューだけを扱っています。豫園のようなもっともらしい外観がないかわりに、店内は清潔で席も注文も安心できます。朱家角で「人あたり」した同行者もいくらか気分を持ち直してホテルに帰りました。

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南京西路の世界最大のユニクロ            カニ入り小籠包

さて、バブリー上海の二日目は「イ肖江南 桃江路店」です。むろん先輩のおごりです。旧フランス租界エリアの衡山路(ヘンシャンルー)と桃江路(タオジャンルー)の交わるあたりにあります。上海の街で特徴的なのは、すべての道路に〜路という名前がついていることです。大きい道路は多くは中国の地名+路になっていて、北中南、西中東の組み合わせになっています。例えば日本人租界のあるあたりを通るのは四川路ですが、虹口(ホンコウ)は市の北側なので四川北路、これが外灘のあたりでは四川中路に変わるという具合です。

そういうわけで、タクシーに乗って、この2つの路名を続けて言うとちゃんとそこに連れて行ってくれるというわけなのです。

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ヘンシャンルー、タオジャンルー            イ肖江南 桃江路店

この店は北京や香港にもあって上海にも数店舗ありますが、日本人デザイナーが手がけた店内はさすがに豪華で、店も竹の生垣に囲まれていて、京劇のお面の絵のドアを入ると全部鏡張りで足元を水が流れているなど、私のような貧乏人はこの時点で引き帰すに違いないのですが、そこはおごりですからしっかりいただきました。

江南過橋排骨とか水煮魚片とか珍しいものをいただきました。ここで水煮というのは熱した石を入れて熱くなった油で煮るのです。この写真の一番手前がこの方法で牛肉を煮たもので、その右にあるのが西瓜ジュースですが、これはおいしい。気に入って翌日も頼んでしまいました。

我々が7時丁度にこの店に入ると、別行動だったメンバーから「結婚30周年おめでとう」とシャンパンを開けていただきました。飲めないお酒と続けざまの四川料理で、同行者はすっかりダウンしてしまい、9時過ぎには早々とホテルに引き揚げました。

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皆さんありがとうございました            一番手前にあるのが水煮牛肉



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